入管法改正案が、3月7日に閣議決定され、国会に提出されました。この法案は、難民申請3回目以降については、申請中であっても強制送還を可能にすることや、退去強制命令を拒んだ人たちに対して、刑事罰を科すことを可能にするといった内容を盛り込んでいます。この法案は、難民申請者や日本に残りたい切実な要求がある人を保護するものではなく、送還をさらに強化する反動的な法案です。現場で活動するなかで当事者と接し、当事者の実際の状況、要求を知っている支援団体が構成団体となっている入管闘争市民連合として、この入管法改悪法案に断固反対し、当事者と共に廃案を求めて闘っていきます。
本記事では、入管法改悪法案が成立してしまった場合、被害を受ける仮放免者(在留資格がない状態で、収容を解かれ、収容施設の外で暮らす人たち)が、どういった人達なのかということを説明していきます。
現在日本には、入管が呼ぶ「送還忌避者」、送還を拒否している外国人が3000人いると言われています。しかし、この人数はここ数年で生まれてきたのではなく、国際基準から逸脱した難民認定率の低さや、当事者に対する差別を根拠とした、長年の入管行政によって積もり積もってきた人たちです。彼らの大半は、日本に残りたい、母国に帰れない切実な事情があります。以下では、私たち入管闘争市民連合が、とりわけ在留資格を付与するべきであると考えている、①未成年の仮放免者、②難民申請者、③日本に家族がいる人や日本に生活基盤がある人が、どのような状態に置かれているのかということを見ていきます。
① 未成年の仮放免者
親が仮放免者であるために、在留を認められない子どもたちがいます。在留資格が無いと、仕事に就くことや保
険に入ることができません。教育を受ける権利は認められているものの、子どもたちは、在留資格がないことで
さまざまな問題を抱えます。例えば、英語を身につけるため大学に通っているAさんは、高校のときから力を入れ
て英語の勉強していますが、将来の夢を聞かれても答えることができません。在留資格がなければ働くことも海
外に行くこともできないため、将来の夢を考えることができません。Bさんは、中学生のときサッカーのクラブチ
ームに所属していました。監督からもチームメイトからも実力が認められていましたが公式試合に出場すること
ができませんでした。在留資格がなく、住民票がないからです。また中学生のCさんは、自分に在留資格がなく、
保険がきかないことをわかっているため、体調が悪くても親に大きな負担をかけたくないという思いから体調が
悪いことを言い出せない時があります。在留資格のない子どもと、その家族は日本で一生懸命生活しています。
しかし、子どもたちは在留資格が認められないことで、彼らの成長、将来にも影響を与えるような困難な状態に
置かれています。
② 難民申請者
日本は、難民認定率が1%をきり、他の難民受け入れ国と比べて極端に低いです。そのため、他の国では難民と
して認められるような理由や、母国に帰れば命の危険がある難民申請者であっても、難民認定されず、仮放免の
状態に置かれているケースがあります。
母国で政党同士の争いのなか命の危険があり、18歳で日本に逃げてきたAさんは、難民申請のときに、母国に
いると身の危険があることを国の機関が認めていることを証明する書類を入管に提出しました。しかし、入管か
らは「偽物ではないか」と疑われ、難民認定されませんでした。さらには「日本人はあなたに国から出ていって
ほしいと思っている」と入管の職員に言われたこともありました。Bさんは、母国で紛争がおきたため日本に船で
逃げてきました。しかし、同じ理由でヨーロッパに逃げた友人はとっくに難民認定されているにも関わらず、日
本に逃げたBさんは難民認定されません。Bさんは「日本に来たのは間違いだったと思っている。しかし、日本
で難民認定されるまで頑張る」と言っています。Bさんは20年以上日本で生活し、難民申請は5回以上行って
いますが、ずっと在留が認められないままです。
③ 日本に家族がいる人、生活基盤が日本にある人
私たちが支援対象としている当事者の中には、バブル期に日本に来日し、現在までずっと在留資格を持たないま
ま日本で生活してきている人たちがいます。なぜそのような状況が生まれてしまっているのかという背景は、主
には入管側の政策転換にあります。2003年までは、とりわけ3K(きつい、汚い、危険)の職場で外国人労
働力が必要とされており、真面目に働いていれば、在留資格を持っていない非正規の状態で滞在していても、摘
発しないという黙認政策を取っていました。当時は、警察に話しかけられ在留資格がないことがわかっても、働
いていさえすれば警察も見逃していたという事実があります。非正規滞在の外国人は、「真面目に働いていれ
ば、日本で生活できるんだ」と思い、日本で長く滞在する人や、結婚して家族と生活する人もなかにはいまし
た。
しかし、2004年ごろから入管は黙認政策を止め、非正規滞在の外国人を大量摘発するようになります。当
時、全国の収容施設は帰ることが出来ない外国人で溢れました。
以上のように、私たちが支援対象としている当事者は、日本で真面目に、一生懸命生活してきた人たちです。また、そのような人たちが在留資格を持たないままになっているという状態は、極端に低い難民認定率や、黙認政策から摘発政策への転換など、法務省―入管庁による入管行政における方針や動きによって生まれてきました。このような、母国に帰ることができない、日本に生活基盤があり、切実に日本在留を求めている人が仮放免者として多く存在しています。
今回の国会で成立させようとしている入管法改正案は、このような仮放免者、退去強制命令が出ても帰ろうとしない当事者に、刑事罰を与えたり、難民申請中に強制送還させたりしようとする極めて悪辣な法案です。なぜ当事者が送還を拒んでいるのか、なぜ当事者が日本在留を強く求めているのか、その個別の事情など全く考えていません。
日本に在留する、道理ある要求をもった外国人を入管の権限をもってさらに追い詰めるような法案は絶対に通してはなりません。入管闘争市民連合は、当事者と共に徹底して反対し、廃案まで追い込み、入管の方針を、当事者1人1人の事情を踏まえ、適切に在留資格を与える救済方針に転換させるよう、闘っていきます。
ぜひ、入管法改悪法案阻止の闘いに、ご支援、ご協力をお願いします。
入管法改悪反対署名はこちらから
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