「帰れ」と言われても「帰れない」。
送還一本やり方針の犠牲者をもうこれ以上出さないために。
入管は「国外へ強制送還の対象となっているが帰国を拒否している外国人」を「送還忌避者」と呼び、そのすべて、あるいはほとんどに送還を迫る強硬方針をとっています。しかしその結果、多くの外国人の人権を侵害し、命を奪ってきました。もはやこのような「送還一本やり方針」による強硬方針が限界であることは明らかです。
この「送還一本やり方針」を転換し、国際基準に基づき難民を受け入れ、在留特別許可を大幅に緩和する―正当かつ深刻な事情がある外国人に日本在留を認めること―が「送還忌避者」を大幅に削減する方法です。
在留を認めるべき当事者の実情を知り、正しい解決を求めていきましょう。
難民申請者、未成年、日本人配偶者、人生の大半を日本で過ごす移住労働者等。
強制送還を拒否せざるをえない外国人の背景にある「事情」
出入国管理庁は、2021年12月に「現行入管法上の問題点」を公表。資料から、「送還忌避者」が、約3,100人いることが明らかになりました。国外へ強制送還の対象になった外国人のうち、ほとんどの人は帰国に応じます。しかし、帰ることができない事情を抱えたごく例外的な人々の数の積もり積もった数が、この3,100人です。2021年3月に名古屋入国管理局の収容所内で亡くなったウィシュマ・サンダマリさんもその一人でした。
帰国できない「事情」の3類型
入管闘争市民連合は、送還を拒否する全ての外国人に対して在留許可を出すことを求めているわけではありません。私たちが、在留特別許可を出すべき正当かつ深刻な事情があると考える外国人には、大きく3つの類型があります。
① 自国での迫害を逃れ日本に庇護を求めている難民申請者
② 日本人、あるいは在留資格のある外国人と結婚した外国人とその家族
③ 人生の大半を日本で過ごす移住労働者
祖国で投獄、処罰、処刑される危険があるため命を掛けて難民申請をしている人、帰国すると家族がバラバラになって再び一緒に暮らすことが困難になる人、生活基盤が日本にあり今さら自分の人生を祖国でやり直すことなどできない人、そもそも日本で生まれ日本で育ってきた人(未成年者を含む)等。
今問題となっているのは、入管の言う「送還忌避者」約3100人の在留・送還をどうしていくかを巡った議論です
このように、「送還忌避者」の中でも入管から「帰れ」と言われても「帰れない」深刻な事情がある外国人に対しては在留資格を出すべきだと私たちは考えています。収容され、生活する基盤を奪われるなど苦しい状況にありながらも帰国を拒否するには、相応の「事情」があるからです。
2021年の入管法改正案をめぐる国会審議を含め、今問題となっているのは、入管の言う「送還忌避者」約3100人の在留・送還をどうするかということを巡った議論なのです。
正当かつ切実な事情で帰国を拒否せざるを得ない外国人に、在留資格を
送還一本やりか、それとも国際基準に基づく難民受け入れ、在留特別許可の大幅緩和による解決か
上に示した3類型のような外国人は、いくら「帰れ」と言われても帰国できません。そうした事情を無視して、在留資格がない外国人すべて、あるいはそのほとんどを無理やり送還しようとしているのが現在の入管の方針です。このことを私たちは「送還一本やり方針」と呼んでいます。
この問題を解決することができる方法はふたつあります。
①国際基準に基づく難民受け入れ
②在留特別許可の大幅緩和
どちらも、新しい法律や制度を作る必要はまったくありません。現行の入管法を適切に運用し、正当かつ切実な理由がある人に対して難民認定、難民在特、特別在留許可等を出すことで、「送還忌避者」を大幅に削減できるのです。また、この問題は入管の言う「送還忌避者」約3100人をめぐる問題であり、移民政策やこれからの外国人受け入れ問題などと混同して議論されるべきではありません。
「帰れない」人に対して「帰れ」と迫る強硬方針は限界
これまで入管は、在留資格のない外国人に対して強制送還を無理やり迫る強硬方針をとってきました。
【強硬方針による具体的施策や結果】
① 仮放免しない。つまり無期限収容。
② 仮放免者の再収容の強化。
③ 国費による無理矢理送還の強化。
④ 在留特別許可の基準の強化。
⑤ (派生的に)収容施設で働く入国警備官の離職の増加
こうした入管の施策によって、入管収容場、収容所に難民や日本に家族がいる被収容者が増大し、長期被収容者がみるみると増大していきました。
入管は長期収容について「収容は刑罰を受けて服役している人とは違い、帰国すれば収容から解放される」と発言しています。しかし、例えば帰国すると迫害を受ける難民にとって、その「解放」とは何を意味するでしょうか?繰り返しますが、帰国できない人を帰国させようとする「送還一本やり方針」自体に限界があるのです。
実情を知ってください
入管の言う「送還忌避者」約3100名には、難民、未成年者、移住労働者等々の在留資格を出すべき人が多く含まれています。入管は、このような人たちも含めて強制送還しようとしており、このことが問題なのです。帰国できない深刻な事情を持つ人に在留特別許可を出すことは、当事者の切実な要求であり、私たち入管闘争市民連合が求めていることです。
問題の実態を知らないがゆえに、様々な偏見や誤解、様々な外国人をめぐる問題との混同が日本社会の中にはあります。そもそも入管がいつから、どのようにして「送還一本やり方針」をとってきたのか詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
*この内容は、2020年8月に行われた集会の基調報告に基づいています